現在会社員として働いている人の中には、忙しさや業務の大変さから、自由を求めてフリーランス・個人事業などの自営(以下、フリーランス)になりたいと考えている人も多いでしょう。
しかし、仕事を辞めること、そしてフリーランスになることにはお金の面をはじめとした不安がつきものです。
今回は「そもそも、一般サラリーマンはフリーランスになれるのか?」という疑問を解消しつつ、実際にフリーランスになる方法とメリット、デメリットなどについても解説していきます。
【結論】誰でもフリーランスにはなれる
結論として、フリーランスには誰でもなれます。
フリーランスになるために必要な手続きは下記の2つだけです。
- 健康保険と年金を切り替える
- 開業届を出す
健康保険を会社のものから「国民健康保険」に切り替え、年金を厚生年金から国民年金に切り替えます。
続いて、税務署に「開業届」を出します。
これであなたも晴れてフリーランスです。おめでとうございます。
フリーランスになる前に準備しておきたいこと
フリーランスに「なること」自体はとても簡単であることがわかったところで、続いて独立前に準備しておきたいことを紹介していきます。
下記3つの準備はしっかり行い、フリーランスになってから慌てないようにしましょう。
半年分は生活費を貯金しておく
会社員の頃は「会社に行けば、やることがある」「毎日ちゃんと仕事をすれば、お給料が入ってくる」という状態でした。
しかし、フリーランスは自分で営業し、仕事をもらう必要があり、最初の頃は月収ゼロ円なんてことも珍しくありません。
生きているだけで口座の残高がどんどん減っていきます。必死に仕事を探す期間ほどフリーランスに取って不安な時期は無いので、ある程度の生活費は確保しておきましょう。
何の仕事で生計を立てるか決めて、勉強する
フリーランスは自分で仕事をもらう必要があるので、クライアントに「何をしたら良いですか?」と聞くような、受け身なスタイルでは誰にも依頼してもらえません。
自分がどの分野で仕事をもらうかは、あらかじめ決めておきましょう。
未経験でも仕事をもらいやすいジャンルには下記のようなものがあります。
- Webライティング
- Webデザイン
- エンジニア(プログラマー)
- 動画編集
いずれもスキルこそ求められるものの、自分のスキルを証明できる「ポートフォリオ」を提出できれば未経験でも仕事をもらえることが多いです。
単価が安めの案件で実務経験を積むのも選択肢の一つですが、エンジニアを例に挙げると「プログラミングって何?」というレベルで応募しても何もできないので、ある程度勉強はしておきましょう。
専門書を読む、対面講座を受けるのも選択肢の一つですが、安く勉強したい人には「udemy」がおすすめです。
ありとあらゆるジャンルのプロが買い切りの動画講座を販売しており、頻繁に開催されるセール時には1,500円程度で講座を購入できるので、予算に余裕が無い人でも利用しやすいです。
ポートフォリオを作る
ポートフォリオ、つまり「自分は何を、どのくらいのクオリティでできるのか」を示すものを作りましょう。
Webライターならば記事、WebエンジニアならWebサイト、動画編集者なら実際に作った動画などです。
ポートフォリオを持っていない人が「Webサイトを作れます!クオリティは保証します!」と応募してきても、発注側としては不安です。
フリーランスの中には、仕事が欲しいがあまり自分のスキルに見合っていない案件に応募してしまう人も居ます。
そういった人に依頼してしまい、お金や時間を無駄にしないよう、企業は慎重です。相手の不安を取り払うためにも、質の高いポートフォリオを提出しましょう。
フリーランスになったらまずやるべきことは?
フリーランスになってから仕事を受注する前に、いくつかしておきたい手続きを紹介していきます。
下記の手続きをしっかり行い、不安をすべて解消しておきましょう。
開業届を出す
先ほど軽く紹介しましたが、フリーランスになったら開業届を出しましょう。
「フリーランスとして独立しました」と税務署に知らせるものです。
また、節税効果の高い「青色申告」をしたい人は、開業届と一緒に出しておくと後で楽なので、併せて提出してしまいましょう。
事業用の銀行口座・クレジットカードを作る
これは必須ではありませんが、事業用の銀行口座を作っておくと、お金の流れがわかりやすくなり、経理の管理がスムーズです。
また、事業用のクレジットカードも作っておけば、確定申告の際に領収書を「これはプライベートで使ったお金、これは経費…」と分ける必要もありません。
ただし、フリーランスは社会的信用がまだ低い傾向にあるので、会社員という社会的信用が高い立場にある間にもう1枚クレジットカードを作っておくのも良いでしょう。
特に事業は大きくお金が動くものなので、特典が多いゴールドカードがおすすめです。
フリーランスが仕事を受注する方法とは?
フリーランスになって最初の課題は、案件を獲得することです。
フリーランスはさまざまな経路で仕事を獲得しますが、代表的なものを紹介します。
クラウドソーシングを使う
最も簡単かつ案件の数が多いのが、「ランサーズ」や「クラウドワークス」などのクラウドソーシングサービスを利用することです。
クラウドソーシングとは、仕事を依頼したい人と受注したい人とをマッチングするサービスで、基本的に企業が募集を出し、仕事をしたい人が応募をする、という流れです。
フリーランスとして独立してすぐの人は、クラウドソーシング経由で仕事を受注することが多いでしょう。
応募要項に求めるスキルのレベルや経験年数などが記載されていることも多いので、どの案件に応募すれば良いかもわかりやすいです。
ただし、クラウドソーシングはユーザーからの手数料で運営されているので、報酬を満額受け取れない点はデメリットと言えます。
企業に直接応募する
メールフォームなどからのフリーランスの応募を歓迎している企業もあります。
応募要項に記載されているスキルを満たしている必要こそありますが、継続案件を獲得できる可能性が高い応募方法です。
クラウドソーシングと異なり、手数料を取られることも無いので、報酬の計算がしやすいのもメリットです。
ただし、「お客様用のメールフォームからの応募」は避けた方が良い場合もあります。
企業によってはそこから採用してくれることもありますが、「営業メールはお断りしています」と記載されているにも関わらず営業してしまうと、クレームにも繋がりかねません。
しっかり企業のサイトを隅から隅まで確認して、迷惑がかからない応募の仕方をしましょう。
知人に紹介してもらう
フリーランスの中には、知人やこれまで働いていた企業の紹介で仕事をもらうこと人もいます。
銀行員の場合は可能性が低いですが、中には退職した企業から業務委託として特定の業務だけを受注するフリーランスもいます。
知人からの紹介の場合、お互いの事情もわかっていますし、金額など細かい条件の交渉も緊張せず行える上に、長い案件になることが多いです。
SNSから探す
X(旧:Twitter)などのSNSで仕事を募集していると、稀に企業から連絡があることもあります。
確実に連絡が来るわけではありませんが、日々の仕事の記録など、「自分が取り組んだことを見返しため」程度の気持ちでアカウントを作ってみるのも選択肢の一つです。
「高単価な依頼が来たらラッキー」くらいのつもりで、ひとまずアカウントを作ってみても良いでしょう。
ブログやサイトを作り、連絡を待つ
自分のブログやサイトを作っておけば、そこから企業からの連絡が来る場合もあります。
あなたのスキルや単価感、納期の目安、ポートフォリオなどを記載しておけば、気になった企業が連絡してくれます。
特にWebライティングの案件が欲しい人は、ブログの記事を充実させておくことでライティング力もアピールできるでしょう。
フリーランスになるメリット
フリーランスになる方法と準備がわかったら、フリーランスになるメリットも確認しておきましょう。
フリーランスという働き方のメリットは大きく分けて3つです。
働く時間、場所が全て自由
フリーランスは納期さえ守っていれば、いつ、どこで働いても、誰にも文句を言われません。
夜型の人は深夜に働いても良いですし、朝型の人は午前で仕事を終わらせてしまって、残りの時間は趣味でも家事でも家族サービスでも、何をしていても自由です。
セキュリティにさえ気をつけていれば、コワーキングスペースやカフェ、ラウンジでも仕事ができます。
会社員という働き方では実現できなかった、「好きな時に、好きな場所で働く」が実現できます。
自分次第でいくらでも稼げる
営業職などのインセンティブが給料に大きく営業する職種以外、銀行員などの会社員は大きく昇給することがありません。
しかし、フリーランスは案件への応募から報酬の交渉まで全て自分で行うので、自分次第でいくらでも稼げます。
例えばプログラミングとWebデザインを学び、Webサイトを作る人は1つのサイト制作費を50万円で受注し、1ヶ月に2つ契約、制作できれば月給100万円です。
スキルを伸ばし、相手を選び、うまく交渉できれば、収入に天井がありません。
仕事を選べる
仕事を選べるのも、フリーランスのメリットです。
会社員の場合、基本的に上司から頼まれた仕事は断れません。「嫌でもこなすのが社会人」と多くの人が思っています。
しかし、フリーランスはしっかりスキルを伸ばし、仕事を取れるならば、自分が仕事をしたくない相手と関わる必要はありませんし、やりたくない仕事は断れます。
「確かなスキルがあれば」という前提はありますが、「やりたいことをやるために」というよりは「やりたくないことを、やらないために」フリーランスになる人も多いです。
フリーランスになるデメリット
もちろん、フリーランスになることにはデメリットも存在します。
メリットとデメリットを把握した上で、本当にフリーランスになりたいのか、考えてみましょう。
最初のうちは収入が安定していない
あなたがSNSで数万以上のフォロワーを保有するインフルエンサーでない限り、独立した瞬間に依頼が殺到することはありません。
よって、最初はなかなか応募しても案件を獲得できず、依頼が来たと思ったら希望単価の半分以下なんてこともあるでしょう。
InstagramやX(旧:Twitter)の広告で「Webデザインを3ヶ月勉強しただけで、週3稼働で毎月手取り50万になった」など流れてくることもありますが、現実的ではありません。
フリーランスになって最初のうちは泥臭く、ひたすら営業をかけ、クラウドソーシングで応募をする日々が続きます。
また、もし業務委託を結べたとしても、多くの契約書には「1ヶ月前に言えば契約を解消できる」といった記載があります。
その一社とだけ契約していた場合、一気に月収ゼロに戻ってしまう、安定性に欠ける部分は否めません。
自分を律することが必須
フリーランスはいつ、どこで働いても良いですが、自由すぎて自分をコントロールできない人も多いです。
極論ですが、納期にさえ間に合うならば、週に5日間はダラダラして、残りの2日間で20時間働き、納品しても問題はありません。
しかし、そんなアンバランスな働き方で良い成果物を作れる人は多くなく、基本的にはある程度自分の中で規則を作ることが大切です。
学生時代に宿題や課題をギリギリまで溜めるタイプだった人は、自分の中で厳しめのルールを決めて働く方が良いかもしれません。
社会的な信用が弱い
フリーランスという働き方は以前より市民権を得ているものの、まだまだ社会的には弱い傾向にあります。
労働基準法が適用されないので、最低賃金の保証もありません。最初の頃は低賃金で買い叩かれる人も多いです。
また、賃貸契約やクレジットカードの作成などの手続きの際も、会社員時代より不利になる傾向があります。特に銀行員という信頼性が高い職業から独立した場合はギャップが大きいでしょう。
よって、近日中にクレジットカードの発行や引っ越しを予定している人は、あらかじめ退職前に手続きを済ませておいた方が良いかもしれません。
フリーランスとして必要な知識
さて、ここまででフリーランスの特徴にについて理解してもらえたかと思います。
次は、フリーランスとして必要な力・スキルについて確認していきます。
下記の3つは私が銀行業務を通じて1,000名を超える経営者を見る中で感じた、フリーランスとして特に必要なものです。
お金に関する知識
フリーランスとして働くには、本業の業務知識は当然ながら、お金の知識も必要となります。
確定申告はもちろん、事業のキャッシュフローを見極めながら適切な運営が求められます。
確定申告について、自分で申告する場合はもちろんのこと、税理士に依頼する場合でも、ある程度のお金や税金に関する知識は必要です。
また、キャッシュフローを見極めた適切な運営については、事業の持続可能性という最低限のことから、事業の成長性という面まで影響してきます。
フリーランスの中には、入ってきた報酬を全て生活費として使ってしまい、確定申告の時期や住民税、国民年金が支払えずに困る人も居ますので、最低限この点はしっかりやりましょう。
また、事業の成長性という点についても、限られた経営資源を如何に収益を産む部門に充てられるかがポイントです。
フリーランスという比較的安定しない職業でも、見通しを持って資産を運用することを意識しましょう。
柔軟な対応力
業界の規制変更や、同業者が取扱う商品やルールの変更など、柔軟な対応力が求められることが多い仕事です。
フリーランスには柔軟性が必須と言えます。関わるクライアントそれぞれに適切な対応をし、業務においても柔軟に対応しながら、クライアントが求める成果物を納品する必要があるからです。
クライアントの取引先が仕事の途中で無理な変更依頼をしてくることも多いので、そういった面倒な事態にも柔軟に対応できる人物は、フリーランスに向いています。
会社員時代は先駆者がいても、フリーランスになれば時代の変化に自ら着いていかなければなりません。
ルールや顧客要望の変更などに柔軟に対応する力がある人は、フリーランスになってからもそのスキルを活かせるでしょう。
コミュニケーション能力
フリーランスにコミュニケーション能力は必須です。
「え、誰とも関わらなくて良さそうだからフリーランスになりたいのだけど…」という人は、考えを改めなければならないかもしれません。
フリーランスにはスキルやスケジュール管理能力も必要ですが、「クライアントに気に入られる」スキルも重要です。
企業の担当者も、あなたと同じ人間であり、連絡が早い、やり取りしていて感じの良い人の方が「長く一緒に仕事したい」と思います。
「最低限のコミュニケーションで、高単価で、長く依頼してくれるクライアントが欲しい」という願望を叶えるには、業界でも屈指のスキルを身につける以外には方法が無いでしょう。
フリーランスは誰でも目指せる!スキルを活かして仕事をもらおう
今回は会社員がフリーランスになる方法や必要な手続き、メリット、デメリットについて詳しく紹介してきました。
フリーランスは誰でもなれますが、仕事を安定して受注することが難しいので、会社員時代に培ったスキルを活かして長く付き合えるクライアントを探しましょう。
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